能勢 孝二郎
能勢孝二郎さんが二期に渡り、三会場での個展を開催した。ギャラリー・ラファイエットで10月7日〜17日、Luft shopとRENEMIAで11月3日〜14日だった。
併せて『NOSÉ KOJIRO BLOCKHEAD』が出版された。
これは、2021年度沖縄アートシーンの一大事であったと思うのだが、沖縄の新聞2紙に展評が掲載された程度の割合普通の反応で終わっていたように思う。
世の中、良いも悪いも分からなくなっているのではないかと心配になる。
能勢さんの作品は公共空間の彫刻として既に有名だが、今回の個展は、文字を刻印するという、彫刻の王道を再認識させ、日常的な工業製品であるコンクリート・ブロックによるブロック・フォントとでもいうべき字体の誕生に立ち会う、画期的作品群の展覧会+作品集刊行として歴史に残るものであると思う。
NOSÉ
KOJIRO
BLOCKHEAD
企画
真喜志奈美(Luft)
桶田千夏子(Luft)
ブックデザイン
金城博之(RENEMIA Inc.)
桃原天(RENEMIA Inc.)
写真
岡本尚文(life goes on Inc.)
座喜味優(terrificz)
翻訳
ベン・デイビス(The White Paper )
発行日
2021年11月3日 初版第1冊発行
発行元
編集工房 東洋企画
印刷
株式会社 東洋企画印刷
定価
5,500円
作品が素晴らしい、写真も良い、ブックデザインも良い、美術書としては値段も低めという
素晴らしい作品集が生まれた。
これは沖縄出版界の画期的大事業である。この企画の中心は間違いなく真喜志奈美さん。
能勢孝二郎さんへの「愛」をひしひしと感じます。
gallery rougheryet
Oct. 7-17. 2021
機能を追求した結果としてのコンクリート・ブロック。しかし、そこから生まれたこの愛らしいフォント(字体)。
ブロック穴のコーナーの曲線がこんなに美しいものだったのかと、思わず愛でたくなる作品。
ギャラリー・ラファイエットでは唯一のフォント作品でした。
ギャラリー・ラファイエットのあるコザは、まさにコンクリート・ブロックの街。植物とグラフィティとのコラボが真っ青な空に映えます。
RENEMIA
Nov. 3-14. 2021
2週間ほど空いた後の、二会場での展示が待ち遠しかった。
まず、RENEMIAの会場に向かった。
マスクのため私の妻と分からなくても、丁寧な説明。さすが
「神対応」の能勢氏。
Blondieって誰? と思わず突っ込みたくなる作品。
電話をかけてみたいけど、ちょっと読み取れません…
clouds
raindrops
typhoon
素晴らしいブロック英小文字フォント(字体)
あれ? o が一つ多い?
この斜め架台、本棚にも良さそう。
私の Library & Studio #504 にも欲しい!
これが案内状の写真の作品かなと思ってよく見たら、
ちょっと違う。ブロックっていろいろあるんですね。
それで、その度に「別字体」が生まれている。
このブロックは中の穴がかなり曲線的。
こちらが、案内状や作品集表紙の作品でした。
能勢さんが BLOCK HEAD だったら、私なんか
DEMENTIA ですけど。
この愛すべきカタカナ字体には、記憶があります。
ラファイエットで見たあの作品?
行を分けて立てることも出来るんですね。
ブロックって素晴らしい。
いや、能勢さんが素晴らしい!
ほら、ちゃんと裏側に「ブロック」が居ました。
これそのものがブロックなのでややこしいですね。
「ブロック」の愛らしいカタカナ字体が居ました。
裏側を鏡で見せる演出も憎い!
この並びの2ブロック一文字もあるんですね。
この違いだけで、少し解読に時間がかかりました。
頭の体操をしているみたいです。
これぞ、ART
モンスターエナジーというドリンクのロゴマークらし
いです。こういうのって全く飲まないので知りません
でした。そう言えば、能勢さん、味の趣味がちょっと
アメリカンかも…
こちら向きにも使うんですね。
字体のバリエーションが急に増えそうです。
というか、ブロック正面フォントとブロック側面フォ
ントに大別した方が良いかもしれません。
作品集に加えて、ポスターも三種類。販売を開始して
いました。もちろん全て購入しました。
ポスター格好良いですね。ラファイエットに展示され
ていた単体ブロックの作品もRENEMIAの作り付けの
棚に綺麗に収まり、この展示も良いなと思いました。
Luft shop
Nov. 3-14. 2021
RENEMIA のある牧志から壺屋へ移動。
三つ目の会場 Luft shopへ。
A・ha!
この会場は、架台=課題シリーズなのかなと思いきや…
彫刻と版画のコラボでもありました。
書と拓本と言い換えても良い。
文字を刻印する彫刻、まさに彫刻の原点の一つを明確に示していました。
LEVEL? 文字は反転することもある。甲骨文を見よ!
観者はその鑑賞能力のレベルを作家から問われているのか?
甲骨文こそ、彫られた文字です。
そう、art はまさに、作家と観客のバトルです。
会場奥の壁面に映し出された能勢さんの作業風景の映像が格好良かった。
この映像は、作品集を買うとそこに載せてあるQRコードで見ることができる。
ちょっとだけ対抗心を燃やし、私は、趣味でショート・ムービーを作ってみた。
右の画像をクリックするとその映像を観ていただけます。どうぞ!